撮り方でも、編集でも、テーマでも。「これをやりたい」という意志がメッセージになる。 佐々田 天 x damassy x 大久保 嘉之 撮り方でも、編集でも、テーマでも。「これをやりたい」という意志がメッセージになる。 佐々田 天 x damassy x 大久保 嘉之
 
この日、偶然揃った1986年生まれの4人

大久保:僕は日本工学院出身で。映像の会社をいくつか経て、4年ほど前にフリーランスとしての活動を始めて今に至ります。普段はミュージックビデオ制作とか、ライブ配信、たまに写真撮影といった仕事をしています。
oh!ga:僕とtajiは、普段は映像制作の仕事には携わっていなくて。けん玉を普及させるdamassyの活動の一環としてPMAに参加したので、入賞を知っても「え、ファイナリスト……?」みたいな感じで(笑)。まず映像じゃなくて、けん玉ありきだもんね。
taji:「映像を観てけん玉を始めた」という人が1人でも増える、それが喜びですね。野望だけはデカいんで。いつか、オリンピックの開会式でけん玉をやりたいんですよ。“技が成功した人数の分花火があがる”のを当たり前にしたい。今日は編集の仕方とか、どうやってアイデアを思いつくのかとかを、吸収して帰ろうという意気込みで来ました。あ、専門用語は少なめでお願いします。(一同笑)
佐々田:僕は日本大学芸術学部を出て、その後広告代理店の営業をしていたのですが、思うところがあり、キャリアを全部捨てて映像制作会社に転職しました。
taji:実は佐々田さんの作品を観たとき、「監督が29歳の時の作品なら年齢が近いかもしれないな」と思っていたんですよ。
佐々田:昨年撮ったので、今30歳の1986年生まれです。
taji&oh!ga:やっぱり!僕らも1986年生まれなんですよ。
大久保:実は僕も1986年生まれで……。
一同:(口々に)すごい!全員同い年だ!
taji:今日このメンバーが揃ったのにも、縁を感じますよね。

映像を専門に学んだ2人、趣味から経験を積んだ2人

oh!ga:tajiは最近ストーリー仕立ての作品を撮りたいというんですけど、僕はもともとインラインスケートをやっていて、スケートビデオの場面場面を切り取ってカッコいい構成にしたりするやり方で経験を積んだので、長編の撮り方やストーリー仕立ての作品の作り方は本当にわからないんです。
taji:俺もわかってないけどね。友達や同期の結婚式で使うような映像から始めているので。今まで累計で50本くらいは作っていて、そこで編集ソフトの扱いを覚えたり、新郎新婦にお題をもらって勉強したり。だから、自分の映像制作って効率的なのかすごく疑問なんですよ。佐々田さんや大久保さんに、編集している現場で指導してほしいですもん(笑)。
oh!ga:逆にお2人がどうやって専門知識を身につけていったのか興味あります。
taji:映像の専門学校って、まず何から習うんですか?
大久保:最初は一通りやるんですよ。編集、カメラ、照明、制作……その中で自分がどれに向いているかを見て、各専門に分かれていく。僕はそこでずっと編集をやっていて、卒業してからも編集の会社で働いていたけれど、「自分でももっと撮りたいな」と思うようになっていきました。昔から映画が好きだったので。
一同:あぁ、なるほど。
大久保:編集しながら「こういう素材はどうやって撮っているんだろう」といったことを考えるうちに、撮影の方にいっていましたね。その後、撮影も編集もある程度分かってきて、後は何が必要かなと思ったら、全体の流れを知る「制作」なんですよ。制作の仕事はキツイとわかっていたけれど、どうしてもやらなきゃダメだというので制作会社に入り、制作からディレクターになって、一通り分かったのでフリーでやろうかと。
佐々田:偉い……制作からディレクターになるってとにかく大変なことなんですよ。
taji:映像制作の役割は普通どんな風に分かれているんですか?
佐々田:プロジェクトの規模にもよりますけど、ディレクター(監督)、編集、カメラ、照明、音響、制作というのはアシスタントディレクター、よく言うADですね。

美しい光と色はアナログ技で生み出されていた

大久保:「Ode to the World」を撮り始めたきっかけは、ジェームズ・ミラー監督の作品でした。とにかく画が美しいんですよ。それで「これはどうやって撮っているんだろう?絞りを開放にした状態で光を当てているのかな?NDフィルターの何かなのかな?それとも、プラスチックレンズを使っているのかな?」とかいろいろ調べたけれど、全然わからなくて。
佐々田:大久保さんの作品も美しいですよね……光と色が、本当にしっかり管理されているなぁと。
大久保:編集はほぼカット割のみなので、色は全然いじっていないんです。
佐々田:じゃあ、カメラとレンズで醸し出している?
大久保:そうです。「レンズワッキング」という技法で、レンズをボディから外しているんですよ。レンズを使わないのではなくて、片手で持ったままボディの前に置くんです。
佐々田:本当ですか!?
大久保:これこそ、ジェームズ・ミラーが得意な技法で。自分で始めたのは最近ですけど。レンズをヒラヒラさせてわざと光を入れて、レンズフレアを出して撮るという。
taji&oh!ga:へぇ……!

佐々田:センサー丸見えの状態ですよね?
大久保:そうです。そのまま被写体と一緒に走ったりすると、キレイな画が撮れたりして。2年前くらいに「あ、ジェームズ・ミラーの作品はレンズを外して撮っているんだ」と気づいたんですよ。普通は、後で編集でレンズフレアとか、ストリークを入れたりするんですけど、やっぱり自分で微妙にその場で調整して、きれいに色が入ってきたら撮っていても嬉しいなと思うので。
佐々田:すごい技術が必要ですよね。モニタリングしながら撮れますか?
大久保:それは……がんばる!(一同笑) この体勢のまま走るとか、もはや苦行ですよね(笑)。

 
ほぼ生で、作りすぎない方が自然な感じがする

oh!ga:僕は、けん玉のやればやるほど成長するところが一番好きなんですね。「Ode~」を観て、出演している男の子は、東京タワーに登る経験を取り入れて成長しているんだな、というのがすごく伝わってきて。今回「感動」がテーマだったのでライフイベントを撮る人も多かったけれど、僕はこの作品から“日常の中で自然に成長している感じ”みたいなものを受け取ったので、すごく好きだなと。
大久保:ジェームズ・ミラーも自分の家族をサンプルで撮ったりしているのですが、それを観て感動というのは日常にあるな、と思いました。彼も多分、単純に普段のあり方を撮っているはず。僕も、特にストーリー仕立ての演出はしませんでした。今回の作品では、日常の中にある感動を自分の中でうまく取り入れることができたかな。
佐々田:僕は普段、仕事でコンポジットや簡単なカラコレなどを手掛けたりするので、大久保さんの作品ではどういう風に色の管理をしているのかが知りたくて。それから、僕も小さい子供がいるので、「May」では「いい表情を撮るなぁ」なんて、グッとくるシーンがあったりして(笑)。
大久保:色はADOBE Premierの機能で調整しているくらいで、明度を上げたりとか。それ用にプラグインを入れたりとかはしていないんです。
佐々田:ほぼほぼ生で。
大久保:編集も、映像をキャプチャーして開いたら、音楽に合わせてインアウトで乗っけていって、そんな軽い感じで作ったものを流してみたら「この方がいいかも」と思えた。今回の作品の場合は特にそうで、ライブ感、生の感じというか。作りすぎない方が自然な感じがするのかな、と。どちらの作品も撮影は1~2時間ですね。それから家に帰ってきて、編集は1時間くらいです。
taji:ほぼ撮って出しですね。
佐々田:自分は編集だけで3ヶ月かかったのに……(苦笑)。

やらせなしでいい表情を捉えるには?

佐々田:僕は大阪出身で、高校生のころの友達と大阪で集まって、19歳と29歳との違いを探しに行くというストーリーを全部撮った中から作ったのが「19_29」なんです。
taji:よく知っているメンバーで、「じゃ、カメラ回すからね」で思った通りに本音は出てきたんですか?
佐々田:実は、思った以上に本音が出たんですよ。
taji:そうなんですか。実はちょっと意識しちゃってなかなか出ないとか、あるのかなと思ったんですけど。
佐々田:いやもう、そのレベルではないくらいの深い仲なので、狙い通りに。彼らを知らないスタッフを連れて行かなくてよかったとすごく思いました。演者じゃない人を撮るのは、不自然さが出ないようにというのは本当に気を遣いますね。
taji:けん玉の動画もヤラセなしでいい表情を捉えてますけど……
oh!ga:でも俺らの力じゃないね、けん玉の力だね。(一同笑)
taji:佐々田さんは「19_29」を撮るときに「やり直し!」とか言っちゃったりしなかったですか?
佐々田:「今のもう1回言って!」がたまにあるくらいでしたけど……一番言ったのは「寝るな!」でした。(一同爆笑)
taji:最後の、ちょっと涙ぐんだ感じの顔とかは……?
佐々田:実は眠たいんですよ(笑)。
oh!ga:めちゃめちゃ真剣な顔で食い入るように観ていたりしたのに。
佐々田:いや、あれも「いつ面白いことを言ってやろうか」という関西人特有の感じですね。次の瞬間、何か言って笑かそうとする(笑)。
大久保:(笑)。ソニーのα7Sを使っていることもあって、夜のシーンがとてもきれいだと思って。プロジェクターの光もとてもきれいで、「編集を分かっている方だなぁ」と感じました。
佐々田:編集は実は苦手なんですけども(笑)。プロジェクターの光は、全部自分で作ったものなんです。作り込む部分は普段仕事で手掛けているところでもあるので。ただ、編集とカメラワークはすごく悩みました。
taji:合成した光だとは全然わからなかった……。普段のお仕事の“コンポジット”は、映像制作のどの部分にあたるんですか?
佐々田:上がってきた映像データにエフェクトを乗せたりして手を加える作業です。人物の目に光を入れたり、肌をきれいにしたり、文字を出したりとかそういうこと全般をやっています。
taji:(作品を観ながら)この光も、すごくきれいだけど作り物なんですね。
佐々田:結構高価な光です。いい光は買えるんです(笑)。
taji&oh!ga:えぇっ!?どういうこと?
佐々田:プロ用のプラグインを入れているので。
taji:そうすると、映像素材的な感じで“光の素材”もたくさんあるんですね。
大久保:こういう光を出すには、レンズの先端に釣り糸をピンと張るんです。その状態で上にパンしたりすると、光が横に分散するのでアナモフィックレンズみたいな感じになりますよ。
taji:へぇ……それはお金かからないですよね?(一同笑)。
大久保:でも、ちゃんと光が伸びちゃうので、ちょっと狙った感じにはなっちゃいますけど。
佐々田:すごいですね。今、デジタルで何でもできるじゃないですか。でもあえてアナログでやる。
大久保:でも、編集でちゃんとそういうことができるのは、逆にうらやましいです。

4人が4人ともすごい情熱を持っている

大久保:damassyのお2人も佐々田さんも、情熱があるというのをすごい感じましたね。「これをやりたい」という意志がすごく伝わったので、やっぱりそこだなと思いました。別にレンズだとか、カメラがどうこうじゃなくて「何を撮りたいか」「何を伝えたいか」というのにはやっぱりすごいメッセージがある。
佐々田:PMAはぜひ来年もやってほしくて。みなさんの持っているいろいろなスキルが発揮された作品を観られたので、アワードを獲りたいというだけじゃなくて、映像業界のためにも続けた方がいいものなんじゃないかと。これを獲るために、みんなに切磋琢磨してほしいじゃないですか。
大久保:僕は逆に、これまで自分に自信がなくて、こういうコンテストに応募したのも初めてで。そうしたら、ちゃんと観てくれる人がいて、この場にも参加できたので、やっぱりこういうチャンスに参加するのは大事だなと思って。仕事ではない、コンテスト用の作品となると「妥協したくない」という気持ちも出てきますけど、自分の中で完成度を決めてしまわないで、「もっとやりたい」というところは次に生かしていけばいい、というくらいの考え方でいいのかなと。
taji:僕は今、映画を撮りたくて。けん玉で人生を変えられちゃった人をすごくたくさん見ているので、その人たちをそのままお届けしたいんですよね。そうすることで、ヨーヨーの好きな人でも、カメラの好きな人でも、“自分がやりたいことを追求していいんだ”と肯定する気持ちを、映像を通して届けられる気がしていて。それにはちゃんとした映像とストーリーが重要だというのはPMAを通して学んだので、絶対チャレンジしたいな、と思っています。あと、来年のPMAのテーマが何だったとしても僕らは絶対けん玉で行きますから、また会いましょう(笑)。

佐々田 天

株式会社アマナデジタルイメージング

1986年生まれ。大阪府出身。日本大学芸術学部放送学科卒業。広告代理店で営業職として5年勤務した後、映像制作会社に転職。広告映像を中心に、年間100本近い映像制作に携わる。プランナーとしても活動し、過去にAC JAPAN、宣伝会議主催の賞など受賞暦多数。
︎http://www.tensa.site/

damassy taji & oh!ga

「ENJOY KENDAMA LIFE.」をスローガンに掲げ、ひとり一本けん玉を持つ世界にするため活動している集団。メンバー全員、普段は会社員。企業活動以外はけん玉普及のため、自治体イベント、YouTuber、映像コンテストへの出品等を行う。最近はけん玉をオリンピック種目にすることにお熱。
︎https://www.youtube.com/c/damassy

大久保 嘉之

映像ディレクター/カメラマン

2007年 日本工学院専門学校放送芸術科卒業後、 映像制作会社にて演出・撮影・制作・編集業務を学ぶ。2013年 フリーランスとなり、CM・VP・記録映像等の制作・演出・撮影・編集まで幅広く映像業務を請け負う。 主要キー局のオンエア用映像撮影、都内近郊のブライダル エンドロール撮影を多数経験。現在は日本プロサーフィン連盟・JPSAの国内外の大会におけるライブ配信撮影やアイドル、バンド、ソロアーティストのMV制作などジャンルにとらわれず、様々なコンテンツの映像化を実現している。
︎http://phosso1986.wixsite.com/yoshiyukiokubo

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