けん玉を流行らせるために映像制作をしています

damassy taji

taji:damassy(ダマッシー)は6人組で、実は5/6は僕が勤めている通信会社の同期なんです。
oh!ga:僕だけ別の会社でWeb制作をしています。ただ、あんまり会社の垣根はないですね。
taji:映像コンテストの取材で言うのもなんですが、僕らはけん玉を流行らせるために活動しています。けん玉って、気軽に挑戦できて、成長が目に見えやすい遊び道具なんですね。特に子どもは、上手にできるようになるとめちゃくちゃ喜んでくれるんです。子どもだけでなく、そばで見ていた親御さんも、教えた僕らもうれしい。けん玉はアナログな玩具ですが、取り組むハードルの低さゆえに、年代や国籍などの垣根を越えてコミュニケーションがとれるインタラクティブなものだと思います。けん玉を通して人々がつながる、そんな世界を作りたいんです。プレイヤーとしてはワールドクラスの人たちからするとまだまだですけど、「けん玉の普及活動」では僕らも負けていません。
oh!ga:活動は主に、けん玉のイベントに参加したり、お祭りの会場でけん玉を教えたりといったリアルの現場と、YouTubeを使ってwebで動画配信をしています。

taji:PMAはfacebookのタイムラインに流れてきた広告で知りました。その場でメンバーに電話して「6人いるからそれぞれで作品を作って6本応募しようぜ!」という勢いだったんですけど……蓋を開けたら俺だけしか映像を作ってなかった。
oh!ga:いや、けん玉ってPMAの中では変化球じゃないですか。そこで他のメンバーの「変化球ばっかり投げるより、決めの一球を際立たせるほうがいい」という思慮深い判断が入ったんですよ。
taji:お陰でファイナリストになりました……というか、応募してないはずのメンバーも我が物顔で喜んでます(笑)。
oh!ga:しかも、映像制作を仕事にしているメンバーは1人もいないのに。授賞式では映像制作のプロばかりが集まっているので、本当に圧倒されました。

damassy oh!ga

taji:動画制作も完全に独学ですね。Windowsムービーメーカーで、写真をつなげて音楽つけてテロップ入れて……から始めて、徐々に動画を使って編集するようになって。「どうすればいいんだろう?」というときはwebで調べて……だから専門用語やショートカットキーすら全然知らないんです。
oh!ga:僕の場合もやっぱり独学です。けん玉を始める前はインラインスケーターだったので、スケートのDVDを見ながらカット割りやアングル、使ってる機材を研究して積み重ねていった感じです。
taji:普段集まるときもLINEとかで連絡を取って、夕飯食いながらみたいな感じですし。それも6人全員集まることってなかなかないよね?
oh!ga:ないね。「来週の週末にこういう映像を撮るから」と声をかけると4~5人集まって、そのメンバーで撮ったものをYouTubeに上げる。
taji:無理せず集まれるときだけ、みたいな感じですね。ただ、映像コンテストにはかなり応募しています。けん玉を広めるためにあらゆるチャンスを活かしたいと思っているので。
oh!ga:YouTuberっぽい映像を撮るのはtajiがうまくて、スケートビデオみたいな映像を撮るのが僕だったりするんですよ。damassyの機材としては、4Kのカメラと、一眼レフと電子式じゃないスタビライザー、それからGoProとGoPro用の電子式スタビライザー。けん玉は結構動きがあるので、揺らさずに撮るためにスタビライザーはよく使っていますね。ちなみにdamassyには「経費」という概念があって(笑)、機材も割り勘で買っています。

みんなに“けん玉やりたい”と感じて、
動いてほしい

taji:けん玉は入社した年に始めて、もう8年目です。damassyのメンバーの一人の部屋へ遊びに行ったときにボロボロのけん玉があって、時間つぶしに遊んでみたんです。それから、旅先での待ち時間にけん玉で遊んだりするようになって。

映像を撮り始めたきっかけは、会社の組合活動で中国の砂漠へボランティアに行ったときのことでした。現地では学生とも交流したかったし、夜飲みに行くのも楽しいと聞いていて。内モンゴル自治区だったので簡単には言葉が通じないけれど、スマートフォンに翻訳アプリを入れて、現地で使うためのコピペ文まで全部作って行きました。ところが……いざ現地でコミュニケーションをとろうと思っても、全然相手にされなかったんです。仕方がないので、時間つぶしに飲みながらけん玉をやっていると、現地の方々がこちらを注目している。で、「けん玉やってみる?」と誘うと瞬時に反応が返ってきて。これにはもう、真剣に感動しちゃいましたね。

僕は通信の会社に勤めていて、コミュニケーションを生業にしている。一方のけん玉は、100年も前に生まれた、ただの木片でできているおもちゃなんですけど……コミュニケーションのきっかけになったのは、通信技術じゃなくてけん玉だったということに感動して。もっとたくさんの人にけん玉を楽しんでほしくて、映像制作にも本格的に力を入れるようになりました。今回のテーマ、「感動」も“感じて動く”と書きますし。誰かがけん玉をしている姿に感じるものがあって、自分もけん玉をやりたくなったら、これは「感動」だろうと考えたわけです。まさに中国では僕がやってるのを見て、感じて動いてくれたわけですから。で、技が成功すると、またやっている自分も感動するんですよ。

年代を超えてその場のみんなを笑顔にした瞬間

oh!ga:僕ら、音楽フェスとかに行くときも毎回けん玉を持っていくんです。それで、道行く方々に遊んでもらってその様子を撮ったりしています。屋外で練習をしているときでも、けん玉を持っていると、ちっちゃいお子さんから、おばあちゃん、おじいちゃんまでよく声をかけてくれるんですよね。だから、素材の撮りためは結構あるんですよ。
taji:応募したいコンテストがいつあるかわからないし、テーマだって何が来るかわからない。そういう意味でも普段のストックが大事なので、声をかけてくれた方には大抵「撮らせてください」とご協力をお願いしています。けん玉ができる子はもちろん寄ってきますし、できない子も、僕らが教えると100%できるようになりますよ。子どもたちにとっては成功体験ですし、うれしくて「ママ―!できたよ!!」ってビックリするくらいはしゃいじゃう子もいるんです。そんな状況を共有してしまうと、もっともっとけん玉を広めたい、と思うんです。

oh!ga:大皿に乗せるのが一番簡単な技なんですけど、それができるようになった子は、次にできた回数をカウントし始めて「51回目できたよー!」ってどんどん報告してくれる。そういうときは、親御さんもすごくうれしそうですね。我が子の「昨日より成長してる」瞬間を見ることができるので。
taji:そうそう。子どもたちも皆ドヤ顔するし(笑)。
oh!ga:僕にとって感動とは「成長」だと思っているんです。僕がけん玉に感じている感動もそうで、けん玉ってやればやるほど、自分が成長したのを実感できる。その瞬間を切り取るような映像を今後も作って行きたいです。
taji:そうだね。「今の撮ってたら、すごい良かったのに」みたいなことも無数にあるし、その逆もあるし。

oh!ga:以前から、「TOKYO二十三区Tour」と題して、1つの区をテーマに、その区を象徴するスポットでけん玉動画を撮っていく企画を続けているんです。墨田区で撮影しているときに、おばあちゃんがふらっと近寄ってきて「けん玉、やらせてくれない?」と。その場にはそのおばあちゃんと10代、20代の若者しかいなかったのに、おばあちゃんがけん玉の剣先に玉を刺して、「とめけん」をキメた瞬間に、みんなで「わーすげぇ!」ってハイタッチしたんですよ。あの瞬間は本当にピースフルで、記録できてよかったです。
taji:今回の作品で最後に登場するおばあちゃんですね。「私95歳で、けん玉やってたのなんて何十年も前よ~」みたいに言いながら、ほんの2~3回でキメてくれて。昔相当やっていた感じでしたね。それで、スーッと去っていった。
oh!ga:それだけで、10代も20代も30代も、もちろん90代も、その場で出会っただけの皆が笑顔になって。
taji:あれはもう、やられたね。

授賞式でのアドバイスが良い気づきになった

taji:今回の作品の狙いは、動画を見て「けん玉をやりたい」と思ってもらうことでした。素材はすでに何TB分もありましたから、その中からどうやって感じて動いてもらうか、構成を考えたり素材を引っ張ってくるのには一番時間をかけました。主に通勤中に構想を練って、電車の中でああでもないこうでもないと考えて、ひらめいたらスマホにメモして。結構早い段階でPMAの開催を知ったので、妄想段階も含めると3ヶ月くらいは構想にかかっていますね。

どうしたらけん玉をやりたくなるか、自分に当てはめて考えると……まずは「何だろう?」という引っかかりと「あぁ、これだったのか!」みたいな驚きがあったほうが沁み渡るかな、と。何百人と撮っているので、笑顔のアップだけを並べて、引いてみると実はけん玉やってた、という構成も考えましたけど……今回は五感全部で感じて動いてほしくて、出だしは音声情報から想像させるような構成にしました。まず聴覚で、そして視覚で、少しずつ理解を深めてもらって、じわじわと気持ちを盛り上げることを意識しています。デートでも「暗闇で一緒にいるとドキドキする」とか言うじゃないですか。ひとつ感覚を奪われると、より気持ちが動く。映像なので、もしも音がミュートされていたら「なにこれ、ずっと真っ暗」って離脱される可能性もあって、賭けではあったんですけどね。

ちなみに審査員の方からは「わかりやすかった。でも実は、素人だっていうのはすぐわかった」と。使っているカメラが違ったり、テロップの置き方とかを見ても、何となくこの人たちは映像制作のプロじゃないなと思ったそうで、そこはちょっと悔しいけれど、さすがだと思いました。それでも「そもそもの素材の選び方は良かった」というコメントをいただけましたし。リアルに声を上げている姿は本当に飾ってないままのリアクションなので、それをしっかりつないだというのはもう誰が見てもわかる、なんなら言葉が通じなくてもわかる、と。
oh!ga:ただ逆に「わかりやすすぎた」というコメントもあって。

 

taji:そう。「最後に視聴者に考える余地を残していれば、もっと良かったけれど、作品のなかで完結していた」と。「この後どうなるんだろう」とか、「そもそもどういうことだったんだろう」っていう、観終わった後に繋ぎとめるような要素があまりなかった、と。それで「けん玉業者なのかと思っていた」と……。
oh!ga:むしろ、けん玉業者以上に普及活動をしてるからね(笑)。
taji:そこはすごくいい気づきでしたね。ちょうど今、次のコンテストを狙っていて、ほとんど新規の素材でストーリー仕立ての作品を考えているので、PMAでのアドバイスも活かしたものにしようと思っています。

「Do or Do.」、
やるしかないという気持ちで

taji:今回ノミネートしてもらえたのも多分、僕らのスキル云々よりは、「僕らの想いが乗っている作品になった」ことと「そもそもの素材の良さ」だと思うんです。その想いと素材を生み出したけん玉って、やっぱりすごいなと、ノミネートされて改めて思いました。
oh!ga:けん玉をやってもらったときの、わかりやすく心が動く感じとかね。
taji:実は、damassyは音楽レーベルとタイアップしていて。洋楽アーティストにけん玉をやってもらう取材が多いんです。僕らはけん玉の魅力を伝えられるし、アーティストも日本文化に触れられて楽しいし、レーベルはアーティストのファンに彼らの素顔を垣間見させることができて、みんながWinな企画なんですよね。この木片の玩具ひとつで。

oh!ga:取材後も裏でこっそりけん玉をやってたりするしね。けん玉って、技を見せて「わぁ、すごい!」と驚かせるだけじゃなくて、その驚いた人にも、その場で「技ができる」喜びを体験してもらえるんです。「私にもできた、すごい!」に繋げる力は、コミュニケーションツールとして本当に優秀だと思います。
taji:僕らの話だとどうしても、映像じゃなくてけん玉の話になっちゃうね。
oh!ga:でも、こんな変化球もファイナリストに選ばれるんだよ、という。
taji:映像コンテストがそういうポータル的な存在になるのは、それはそれで素敵ですよね。自分たちの文化とか想いを広げる場として、素人であっても、気軽に挑戦できる。そういう作品を僕らも見てみたいですし。

oh!ga:迷っている暇があったら応募したほうがいいよね。
taji:俺らは「Do or Do.」、つまり“やるしかない”なんです。これだと感じた瞬間にもう、それはやらないと後悔してしまいますから。この記事を読んでいる人は絶対応募したほうがいい。だって、グランプリ受賞者のインタビューだけじゃなくて、ノミネートされた人のインタビューまで読む人って、かなり熱量のある人のはず。
oh!ga:それに映像のプロではない僕らでも、グランプリがもらえる可能性があるところまでは行けたんで。
taji:想いがあれば「ワンチャンあるかも」という夢は見られました(笑)。

taji
oh!ga

damassy taji & oh!ga

「ENJOY KENDAMA LIFE.」をスローガンに掲げ、ひとり一本けん玉を持つ世界にするため活動している集団。メンバー全員、普段は会社員。企業活動以外はけん玉普及のため、自治体イベント、YouTuber、映像コンテストへの出品等を行う。最近はけん玉をオリンピック種目にすることにお熱。

FINAL SELECTION

 

Ode to the world/大久保嘉之

すごく映像がきれいだと思います。初めて東京タワーに行った男の子が、上から景色を見て何を吸収したのか伝わってくるような映像でした。映像と男の子の感動がすごくリンクしているように感じました。(oh!ga)

FINAL SELECTION

 

4OR HANDMADE SESSION/KOTOSCREEN

2人でお互いにカメラを渡しながら「今からやるからちょっと撮って」という風にやるのが、僕らがけん玉のトリックムービーを作るときの撮り方に似ているんです。構成を練ってる相談の画とか、疲れてカップ麺を食べている画とか、裏側の部分も結構あったりして。親近感もあって、印象に残ってますね。(taji)