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3C's

Creative
Craftsmanship
Challenging
21

Yuichi Tsugiishi

Videographer
ウエディングムービーをアップデートする。
先端を駆けるビデオグラファーの視点

次石 悠一

高校卒業後、広島の映像専門学校へ入学し、映像に関する知識を一から学ぶ。その後、ウェディング専門の映像制作会社へ入社してあらゆる現場で経験を積んだのち、30歳手前でTomato Red Motionを設立。結婚式の1日を撮影し、その場で即日編集してエンドロールで流す“ダイジェストムービー”を主体としている。

ウェディングムービー制作を手掛けるビデオグラファーの次石氏。得意とするのは“結婚を決めた二人の想い”を伝える鮮烈で美しい映像。これまでのウェディングムービーにはなかった新たな世界観を提示し、国内外から高い評価を得ています。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、結婚式のあり方が大きく変化する今。ウェディングムービー業界の最前線で作品を作り続ける次石氏に、映像制作における3C(Creative Craftsmanship Challenging)を聞きました。

chapter 01
遠足の道中。友人らと撮ったパロディ映像をきっかけに映像業界の道へ

僕が映像の仕事を志したきっかけは、おそらく小学生のころに遡ります。僕は大体「レクリエーション係」を担当していて、行事で何をするかを決めるような役回りでした。格好つけて言えば、小さい頃から何かを企画するのが好きだったんですね(笑)。それは中学になってもブレることはなく、同じようにレクリエーション係を選択。ある日、遠足に向かうバスの車内で何か面白いことができないかと考え、当時流行っていた映画のパロディを撮って車中で流したことがありました。

もちろん中学生の身で大それた機材も持ち合わせていなかったので、父親のビデオカメラを持ち出して一発撮りした簡単なムービーなのですが、それがすごく楽しくて。それまでは何をするか企画することに楽しさを感じていましたが、この時はじめて友人らと一緒に企画してそれを形にしたんです。そのパロディ映像が大きくウケたわけではないのですが、当時の楽しかった記憶が僕のキャリアの原点なのではないかと思います。さらに、高校ではバンドもやっていたため、ライブハウスの音響・映像などのスタッフさんの存在が身近にありました。そうした周囲の環境にも影響され、映像を本格的に学ぶために地元の島根を出て、広島の専門学校へ入学します。

在学時はテレビ局でADのアルバイトも経験し、地方のバラエティ番組を担当していました。専門学校卒業後は、ウェディング専門の映像制作会社へ入社。29歳で会社を立ち上げるまでの9年間勤めました。もともと「独立したいな」と考えていたのですが、入社して6年目くらいの時に、会社が関東に進出することになり、その立ち上げメンバーに選ばれたのです。

広島での実績は豊富にありましたが、関東での実績はゼロだったので、会社員でありながらゼロイチであらゆる経験を積ませてもらいました。その後、CRAZY WEDDINGというフルオーダーメイドの結婚式プランニング会社と出会います。従来のいわゆる記録的なものに留まっていたウェディングムービーとは一線を画した映像が作れるのではないかと感じ、衝撃を受けたのを覚えています。これを機に、30歳目前で独立。現在のTomato Red Motionを設立します。

chapter 02
涙ながらに感謝の声をいただく仕事

ウェディングムービーの制作は、まず依頼をいただいたら直接結婚式を挙げる新郎新婦のお二人へのヒアリングからスタートします。ヒアリングにかける時間はだいたい1時間ほどですが、大切にしているのは「その人らしいエピソードを聞き出す」こと。結婚式を挙げるに至った現在までのプロセスを聞いていく中で、たとえば挫折したことや心残りとなっていることを聞き出します。

それを起承転結の「転」とし、結婚式までにどういったプロセスを経たのかをストーリーに置き換えていくのです。昨年はコロナ禍で、結婚式を延期せざるを得ない方も多くいらっしゃったと思います。僕自身、それを痛感していましたし、だからこそ結婚式を挙げると決めたのであれば、ビデオグラファーとしていいものを作りたいという想いがより一層強くなったように思います。

手掛けた作品はどれも印象深いのですが、その中でも特に心に残っているものがあります。それが、コロナ禍で結婚式が延期になり、挙式を待つ間に新婦のお母様が亡くなられた方からのご依頼でした。お話を聞いていく中で、「この結婚式を誰よりもお母様に見せたかっただろうな」と僕自身強く感じましたし、それをなんとかして映像の力で形にしたいと思って作りました。

ヒアリングしてみると、幼少期からお母様が新婦に宛てたいくつもの手紙があることを知りました。それを実際に見せていただき、内容を継ぎ接ぎして映像化したんです。実際に映像を見ていただくと、最初は「誰からのメッセージだろう?」と疑問に感じると思います。しかし、展開が進むにつれ、徐々に「あ、これはお母様からのメッセージだ」と気づいていく構成です。届くはずのない手紙が届くという流れなので、オールドフィルムのようなエフェクトをかけるなど工夫をしました。

コロナ禍におけるウェディングムービー

僕も結婚式の当日、現場にいたのですが、新郎新婦はもちろんのこと来場者の皆さんも涙を流していらっしゃいました。最後に、新郎新婦のお二人から泣きながら「ありがとう」と感謝の言葉をいただいたのですが、それこそがこの仕事の醍醐味なのではないかと思います。自分の好きなことを突き詰めた結果、ここまで感謝していただける仕事は、そうそうありません。台本やセリフも一切存在しないドキュメンタリーですし、芸能人ではなく一般の方の日常に迫った映像です。しかし、お話を聞きながら深く掘り下げていき、「ウェディングムービーでここまでやるのか!」と思っていただける作品を作り続けることが、僕のこだわりです。

このほかにも、ドローンを用いて西表島でロケをしたウェディングムービーも手掛けました。従来の“記録”が主な目的だった映像から大きく離れ、“演出”に寄ってみたらどうなるだろう?という実験の意味も込めて作った作品です。

西表島でロケをしたウェディングムービー

chapter 03
ドキュメンタリーと演出の間に介在価値がある

あらゆる映像には大きく分けて二つの軸が存在します。一つはドキュメンタリー。ウェディングで言うところの“記録”です。従来の結婚式の1日を記録していくだけの映像のことですね。そしてもう一つは”演出”です。

ウェディングムービーで演出を入れるには新郎新婦のお二人に演技をしてもらわなければなりません。でもそれって、後々リビングなんかで見た時に、恥ずかしくなると思うんですよ(笑)。演技をしている自分っていうのが。かといって、記録するだけなら僕らの介在価値はありません。なので、記録と演出のちょうど真ん中の絶妙なポイントを攻めていくのが僕の作品の独自性だと思います。

そのために、撮影の際も「天を仰いでください」みたいな指示は一切しません。もっとカジュアルに「今、空に雲何個ありますか?」みたいな聞き方をして、撮りたい画が撮れるよう誘導します。要するに、”行動指示”はするけれど、”演技指示”は一切しないということですね。

chapter 04
「その人に向き合うこと」を大事にした映像づくり

ウェディングムービーの被写体は一般の方なので、ふとした時にいい動きや表情をすることもあります。そういう不意の瞬間をしっかりおさえたいので、機材は機動性の高いものでなくてはなりません。僕が今使っているのは、ソニーのα7S Ⅲ。機動性の高さに加え、手振れ補正が付いていたり、コンパクトな点も気に入っています。大掛かりな機材だと、撮られる側も緊張してしまいますし、何より回すのに時間がかかるのです。僕らの仕事はライティングやポーズを決めて、「よーい、スタート!」という撮り方はしません。だから、照明を使わずとも、α7S Ⅲは綺麗な画が撮れるので本当にありがたいですね。

先ほどもお話した通り、僕のこだわりは、その人らしさを保ちつつも、一方で映画のようなクオリテイの映像を作ること。そのために大事にしているのは「その人と向き合うこと」です。話を聞いて、感情を持って接すること。「すごい」とか「悲しい」とか、自分ごととして話を聞くのです。そうしていくうちに、この角度の表情・ポーズが可愛い、かっこいいといった僕側の感情も生まれます。

自分がいいなと思っているものを形にすると、作家性が生まれますよね。なんの感情もなく、ただいい構図だけで撮っていても作風は生まれません。その人を見て、いいなと思った瞬間を映像に落とし込む。いいなと思う要素をありのまま生かした映像作品を作る。それが僕の強みです。

chapter 05
漫才から“仕組み”を学び応用する

これからは、誰もやったことのないウェディングムービーに挑戦したいと思っています。たとえばCGを取り入れたりするのも面白いですよね。ここまでやるか!と思ってもらえると、嬉しいです。以前は、海外の方からお声がけいただき、スペインに行って撮影したこともありました。今はこんな状況なのでなかなか難しいですが、いつかまた海外でもチャレンジしたいですね。そのために、日々技術を磨き続けることが大事だと思っています。

スペインで撮影したウェディングムービー

技術を磨き続けるために、ウェディングにとらわれずあらゆる映像を見るのですが、最近は漫才を見ていて「なんで漫才ってこんなに面白いんだ?」と気になり、漫才入門という本を買って仕組みを勉強しました(笑)。みんなが分かる共通のお題で始まり、結論は最後に言う。そしてその結論の手前に小ボケがいくつかあり、最後に大ボケ…という構成があるからこそ、おさまりが良く、見ている側が楽しめる。これをウェディングムービーに置き換えてアレンジできるかも、なんて考えたりもします。

普段から食わず嫌いをせずに、あらゆるものからヒントを得て、その仕組みを知っているとアレンジしやすく、知識になるのです。今後もこうした勉強は続けつつ、今の自分の強みを生かした作品を作り続けていきたいですね。

あとがき

従来のウェディングムービーと言うと、式当日の出来事を記録する映像が一般的でした。しかし次石氏の作品には「結婚式の映像は、ここまできたか!」と思わず感嘆してしまうほど、他を圧倒する構成・映像美がありました。記録と演出の絶妙な間にこそ、自らの介在価値があると話す次石氏。
お話を聞いていく中で見えてきたのは、強い挑戦意欲でした。ウェディングという枠に縛られず、音楽や漫才などあらゆるジャンルから刺激を受け、その仕組みを学びながら自身の仕事にアレンジして転用し、進化を続けています。次は一体どんなウェディングムービーを世に送り出すのか。そうワクワクせずにはいられない取材でした。今後もCGを取り入れるなどウェディングムービーの新たな可能性を模索したいとお話していた次石氏。さらなる活躍に期待したいです。

Text : Yukitaka Sanada
Photo : Yuji Yamazaki

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