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SNSは「うわさ」をどう変えたのか?

Chamber 30
2019.1.18

SNSは「うわさ」をどう変えたのか?

SNSによる情報発信・収集は私たちの生活の中でごく一般的なものになっています。一方でデマや風評被害の拡散、フェイクニュースなど情報リテラシーが試されるような問題も顕在化しています。今回は「うわさ」を研究テーマにしている中央大学教授・松田美佐さんに、SNSがうわさにもたらした影響を中心に、お話を伺いました。

SNSは「うわさ」をどう変えたのか?

―SNSの登場は「うわさ」にどのような変化をもたらしたのでしょうか?

「まず一つ目に、うわさの伝達スピードが格段に速くなったことが挙げられます。昔は人の移動と等しかったうわさの伝達速度が、インターネットやSNSの登場によって、瞬時に世界中に伝わるようになりました。

もう一つがうわさの短命化です。あるうわさがネットやSNSを介して多くの人の目に晒されると、その信ぴょう性について人々に検証されるようにもなります。疑わしいうわさはすぐに検証され、下火になるようにもなったと言えるでしょう。」

SNSは「うわさ」をどう変えたのか?

―うわさの広まるスピードも速い分、それが消えてゆくスピードも速くなったということですね。

「『消えてゆく』という言い方には少し語弊があって、記録性の高いネット上では、基本的にうわさは消えないものだと認識しておいた方がいいと思います。つまり信ぴょう性に欠けるうわさは、早晩話題に上らなくなる。しかし完全に消えたわけでなく、何かのきっかけで発掘され、再燃することも起こり得る。

例えば『大地震が起こる』なんてうわさは、ネット社会以前から定期的に広まるうわさのパターンとしてあったわけですが、検索性や記録性が高いネット上では、そのような過去のうわさの再燃も起こりやすくなっているわけです。」

SNSは「うわさ」をどう変えたのか?

―昨今、SNSにおけるデマの拡散やフェイクニュースなどの問題が取り沙汰されています。私たちがこうしたデマやフェイクニュースを見極めるには、どうすればいいのでしょうか?

「うわさが広まるのは、そのうわさに『いつか起こるかもしれない』と多くの人が心のどこかで思っている、もっともらしい部分があるからです。学生たちに聞いても『ネットでのうわさは信じない』と基本的には言います。でもSNSで流れてきたうわさを他の人に転送しないかというと、そうとは限らない。なぜなら、『うわさ』ではなく、『情報』として回ってくるからです。

そうしたことを考えると、個人が『あるうわさをデマかどうか見極める』ということには、ほとんど意味がありません。それよりも発信元が分からない情報や、少しでも怪しいと感じた情報は安易に拡散しないことの方がはるかに重要です。」

SNSは「うわさ」をどう変えたのか?

―災害時などの緊急時に、個人がSNSを活用して情報収集するようなことも最近ではよく見られます。

「マスメディアに流れないローカルな情報が、写真付きでピンポイントに手に入ることはSNSのメリットの一つに挙げられます。とはいえ、やはりそのような場合も、憶測でやみくもに情報発信しないことが鉄則だと言えるでしょう。

とりわけ被災地にいない人間は、安易に情報を発信・拡散しないようにする配慮が求められます。災害時にデマや誤情報が広まる場合、その多くは『情報を伝えてあげなければ』という人々の善意によるものだと思います。そうした善意は必ずしもいいものではないことを、社会が共通認識として持っておくべきではないでしょうか。」

SNSは「うわさ」をどう変えたのか?

―私たちがSNSをより価値のある情報ツールとして利用するためには、どのような努力が必要なのでしょうか?

「情報が一方通行になりがちな中で、もっと“対話”が必要だと感じています。SNSに限らず、電子メディア全体の特徴として、情報が文脈から切り離され、一人歩きしてしまうことが挙げられます。前後の文脈を読むとそんなことは書いていないのに、読み手が一部分だけを都合よく切り取って過剰に反応してしまう。このような断絶を埋める手立てを考えなければ、いつまで経っても対話は生まれません。」

SNSは「うわさ」をどう変えたのか?

―どうすればそのような「対話」が可能になると考えますか?

「例えばネット上に議論の場やメディアを設けるとして、『この空間はこういうイシューについてみんなで議論する場です』とか『こういう観点やこういう切り口から論じるメディアです』といった前提条件やお約束をいかに設定できるか? これは一つのポイントになると思います。

例えば、新聞に載っている情報は記者が取材し、別の人が編集し、校閲してという前提があって、『基本的には信頼できる』という社会的な共通認識が成り立っているわけですよね。

難しい点は、そうした共通認識を作るには、時間がかかるということ。Webメディアには紙幅や時間枠といった制限がないので、マスメディアより自由度は高いと思うのですが、3行で読めるような記事が読者に求められている現状もあります。」

SNSは「うわさ」をどう変えたのか?

―確かに既存のWebメディアでは、速報性や更新スピードが重視される傾向が強いように思えます…。

「とにかく現代社会は自力でものを調べ、考え、まとめる時間が足りません。情報を発信するときにも、『自分が目にしたものは本当に正しいのか?』と立ち止まって考えるような、情報を一度寝かせておく姿勢が省みられない。

携帯電話がなかった時代、友達とけんかしたら一晩を悶々として過ごしていたわけです。そこでいろいろと考える時間が実は大切だった。今ならメッセージ一つで謝ることができるけど、『相手がなんで怒っているか分からないけど、とりあえず謝っとこう』という姿勢では、根本的な解決にはつながりませんよね。『私の言い方もよくなかったな』とか『でも相手のこういう部分は直して欲しいな』とか、お互いの関係性まで振り返ることができて、和解も生まれるわけで。

そういったコミュニケーションがネットやSNSで可能になれば、情報ツールとしても、より価値のあるものになっていくと思います。」

SNSは「うわさ」をどう変えたのか?

―マーケティングなどにおいてはSNSの口コミ分析が有効に働くケースも多いと思うのですが、企業がSNSで情報収集などをするときに、心がけるべきことについても教えてください。

「口コミは大半が『ハズレだった』というようなもの。『普通に良かった』という声は、なかなか上がってこないものです。そもそも関心を持たれないと口コミもうわさもゼロなので、自社に対する悪い口コミを見つけたとしても、ある意味ポジティブに捉えるべきだと思います。もちろん、極端な炎上などを抜きにしてですが。

またSNSの声を分析することで『自社に持たれている潜在的イメージ』を見える化できます。そういったものを参考にしつつ、SNSに参加していない層の声にもバランス良く目を向けることができれば、これまでの自分たちのイメージをいい意味で覆すような製品・サービスを送り出せるかもしれません。」

SNSは「うわさ」をどう変えたのか?

誰もが手軽に情報を発信できる現代社会で、どのような振る舞いや心構えを身につけておくべきなのか? そんなことをあらためて考えさせられるお話でした。
個人はもちろん、企業や公的機関もSNSを活用して情報発信・収集を行う世の中だからこそ、そこで流れる情報やコミュニケーションの質を向上させていく努力が、私たち一人ひとりに今後求められていくのではないでしょうか。

SNSは「うわさ」をどう変えたのか?

松田 美佐

中央大学 文学部教授

社会情報学、コミュニケーション論、メディア論を専門とし、「うわさ」を主要なテーマに据えて、研究を行っている。著書に『うわさとは何か ネットで変容する「最も古いメディア」』(中公新書、2014年)など。

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