宇宙から感動体験を。スタートしたソニーの壮大な目論み(後編)

Chamber 57
2021.7.13

宇宙から感動体験を。スタートしたソニーの壮大な目論み
ソニーが描く宇宙ビジネス構想と、求める共創パートナー(後編)

宇宙を解放する――ソニーが宇宙ビジネスに進出します。「宇宙感動体験事業」の創出のため、ソニーは東京大学と国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)とともに「Sony Space Entertainment Project」(以下、SSEP)を2020年に発表しました。前編のインタビューでは、三者の代表に、プロジェクトの経緯や全容、それぞれの想いを語っていただきました。後編となる今回は、2022年度の衛星打ち上げを見据えて、本プロジェクトのビジネス構想や、共創パートナー募集についての思いを、宇宙エンタテインメント推進室の見座田 圭浩さんに伺いました。

――このSSEPでは、「宇宙を解放する」と銘打ち、新しい衛星を使ったビジネスを開発するパートナーを募集されています。まずは、その意図を教えてください。

「ソニーはグループ内に映画や音楽ゲームなどさまざまなアセットを持っています。しかし、それらだけに留まらず、弊社にないアセットをお持ちのパートナー様と組むことでより面白く、斬新な宇宙ビジネスが作れると考えています」

――「宇宙を解放する」という言葉に好奇心を刺激される人も多いのではないでしょうか。ソニーとしては、どのような人物やアイデアがこのSSEPに参加することを期待していますか?

「ソニーも宇宙領域ではチャレンジャーです。すでに宇宙業界で活躍されている方々と、お互いの強みを生かして新たな可能性を見出すことももちろんですが、我々のように宇宙を始めたばかりであったり、宇宙に興味がある方々とも、一緒に宇宙ビジネスを作るというチャレンジをともにしていければと思っています。

特に宇宙に遠い存在で、なおかつ弊社にない強みを持っている企業は魅力的ですね。そういう企業とこそ、宇宙の新しい価値を見つけることができると思うからです。我々もまだ模索中なので、コンサルできるところまでは到達できていませんが『実現方法は分からないけど、アイデアがある。こういうことがやりたい』と具体性を持つパートナー様だと共創の道筋が見つけやすいと思います」

宇宙から感動体験を。スタートしたソニーの壮大な目論み(後編)

――現時点でSSEPが検討しているBtoBサービスとは、具体的にどのようなものでしょうか?

「衛星搭載カメラのパン、チルト、ロール、ズームの操作をベースに、例えば次の3つのような提供方法を検討しています。

1. カメラを搭載した衛星を操作する時間枠を販売。10分程度の時間内で自由自在に操作できる。
2. 弊社が数日前に撮影したばかりの宇宙の映像を、定期配信するサブスクリプションパッケージ。
3. リクエストに応じた受託契約。例えば、宇宙の映像素材を使い作品を作ろうとしている企業やアーティストからリクエストを受け、それに応じて撮影・制作を行うサービス。

以上のようなBtoBの施策と並行して、BtoC施策や、本プロジェクトのファンになっていただけるようなコミュニティー施策を検討しております」

――宇宙と地上間の超長距離通信となりますが、どの程度のタイムラグが発生する見込みでしょうか?

「やはり多少のタイムラグは避けられませんが、数秒以内の遅延に抑えることを目標に技術開発を進めています。ただ、タイムラグがあること自体が、宇宙と繋がっていることの実感に繋がる可能性の要素でもありますので、そうした面もいかせるような演出をしていきたいと思っています」

――BtoBサービス展開や、共創パートナーの募集も行われていますが、ソニーグループ内で本プロジェクトを利用したいという声はありますか?

「すでに多数の声掛けをいただいています。分かりやすいところでは、アーティストのライブにおいて『バックスクリーンに宇宙のリアルタイム映像を流したい』といった声などがあります。宇宙や夜空を歌った楽曲もたくさんありますし、すでに検討段階にあります。他にも、映像制作会社と取引があるグループ内組織がありますので、そうした方々と宇宙映像を使うことも検討しております。

また、ソニーの強みであるVRやゲームでも、その可能性は無限に広がっています。先日行なった社内向けのオンラインイベントでは、『リアルな宇宙空間を背景にしたインベーダーゲームをやりたい!』などの意見も挙がっていましたね。今は、とにかく自由な発想で楽しいことはなんでもやっていきたい、という考えです」

宇宙から感動体験を。スタートしたソニーの壮大な目論み(後編)

星雲の観測データ©JAXA

――2020年のCEATECで本プロジェクト「SSEP」発表と同時に、共創パートナーの募集も行われました。現状パートナーとの取り組みはどのような状況でしょうか?

「昨年のCEATECでは、メディアアート、ドキュメンタリー制作、科学館・公共施設、プロモーション・CM、教育・人材育成、観光・旅行、ショールーム、テーマパーク、金融・保険といった9分野を、共創パートナーの分野として例示しました。そこからさまざまな企業様からお声掛けをいただき、それら9分野内のパートナー様はもちろんですが、それ以外の分野からもご関心をいただいている状況です」

――現時点で共創パートナーには、どのような団体や企業が応募してきているのでしょうか?

「現時点で具体的な業界や団体名などは申し上げられないのですが、千差万別です。大企業もあれば、数十人規模のベンチャー企業もいらっしゃいます。我々としてはパートナーとなる会社の規模感は意識しておらず、お互いの持つ強みが棲み分けられているかどうかが大きいと考えています。例えば、クリエイティブや教育の領域では既に具体的な検討を進めています」

――それら共創パートナーとの取り組みは、現在どのような段階にありますか?

「多くのパートナー様とは、どうすればお互いの強みを活かした衛星利用や、BtoCコミュニティーづくりを行えるのかを検討している段階にあります。それらの検討を通じて、共創の可能性が見えた企業様とは、今年度中にPoC(概念実証)を通して事業として成り立つかどうかを検証する流れとなっています」

宇宙から感動体験を。スタートしたソニーの壮大な目論み(後編)

はやぶさ2が地球スイングバイ後に撮影した地球©JAXA、東大など

――宇宙という未知の領域でビジネスを考えるとき、どのような発想が重要だとお考えですか?

「『宇宙の意味のイノベーション』と我々が呼んでいる考え方があります。ロウソクはもともと暗いところを照らす道具として使われていましたが、昨今ではムードを出すために使われることが一般的で、これは『意味のイノベーション』の結果だと言われています。つまり、暗いところを照らすのではなく、暗さを引き立たせるために使われるようになったわけですが、それによって現在の方がロウソクは売り上げを伸ばしているそうなのです。宇宙ビジネスを考える上でも、衛星通信やリモートセンシングといった道具的な意味だけではなく、地球環境保護やボーダーレス、自分や人間関係のかけがえのなさを理解するような感性的な意味などが大事ではないかと考えています。パートナー様の領域や商材が、宇宙と繋がることで別の価値や意味を生み出せないかという観点で事業検討を進めています」

――広い分野でパートナーを求めているとのことですが、特に求めている領域はありますか?

「カメラをメインとした衛星利用ですので、映像制作会社や映像を使ってビジネスをしている会社が直接的なパートナーになると思います。他には、教育分野とも相性が良いのではと考えています。宇宙は理科学の1ジャンルみたいなイメージがあると思うのですが、宇宙空間の情報から国際協力の視点やSDGsの考え方を学ぶのにも適していますし、宇宙は古くは万葉集などの和歌や江戸時代の俳句の題材にもされていたので、漢文の時間に宇宙の映像を使って一句書いてみるなどの活用もあるのではないでしょうか」

宇宙から感動体験を。スタートしたソニーの壮大な目論み(後編)

――パートナーが本プロジェクトに関わることで、どのような醍醐味を得られるとお考えでしょうか?

「『宇宙を身近にする』という、これまであまりなかった取り組みです。今はまだ目新しい宇宙事業が、今後世の中の当たり前になっていく過程を見られるのが、本プロジェクトで一緒にビジネスを行なっていただくことの醍醐味かと考えております」

――最後に、本プロジェクトにかける想いと、共創パートナーを志す皆さんへメッセージをいただけますでしょうか。

「人々が、自分で自由に操作できる衛星カメラを通して宇宙や地球を見ることにより『宇宙視点』を得ること、そのような体験を通じて、さらには新たな感動体験や表現機会を世界中に広めるということ、それが、事業視点で本プロジェクトが目指していることです。個人的には、世界中の人々がリアルタイムの地球を見ることで、身近な人たちや何気ない日々の大切さを実感し、その意識が変わるのではないかと思っています。宇宙規模で物事を考えることで人の考え方がより豊かになる、それを目指していきたいです。

そして、我々は衛星とそれを自由自在に動かすシステムを作っていますが、この衛星をどう使えば事業として成功と言えるのかは答えがありません。現時点でもその仮説はたくさん立てていますが、アイデアをお持ちでその仮説を増やしていただけるパートナー様であれば、様々な業界や会社規模の方々から、ぜひお声掛けいただければと思っております。よろしくお願いいたします」

宇宙から感動体験を。スタートしたソニーの壮大な目論み(後編)

自由に操作・撮影できる衛星を提供することにより、遠い世界だった宇宙を身近にする本プロジェクト。その先にあるのは、私たちの生活が宇宙に発展する未来なのでしょう。見座田さんのお話を伺う中、幅広い業界からのパートナーとの共創により、その新しい時代の実現が近づきつつあるのを感じました。

最上部の写真:光学航法望遠カメラ(ONC-T)による撮像©JAXA、産総研など

SSEPでは、オープンイノベーションの加速や各種ニーズ検証を兼ねたウェビナーを開始しました。
詳細は下記のWEBページをご参照ください。
https://first-flight.sony.com/pj/space-entertainment

また、twitterによる発信もおこなっていますので、皆さまのフォローをお待ちしています。
https://twitter.com/SpaceENTbySony

宇宙から感動体験を。スタートしたソニーの壮大な目論み(後編)

見座田 圭浩

ソニーグループ株式会社 宇宙エンタテインメント推進室

2011年にソニー入社。ITインフラ部門で社内ネットワーク構築やソニーストアの運用などを担当したほか、経営管理部門にて中期経営計画の策定や中近東エリアの事業計画策定を担当。2020年より、宇宙エンタテインメント準備室(現 宇宙エンタテインメント推進室)に所属。

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