「西に富士、東に筑波」と称される筑波山。度々、歴史の舞台にも登場する名山である。その麓にある石岡市に駒村清明堂がある。
創業は明治時代に遡る工房では、いまも創業当時と変わらず杉の葉と水車を用いた製法で線香を作り続けている。選ばれる杉の葉は、もちろん地元、茨城・筑波のもの。それも樹齢50年以上の杉を使い、つなぎは一切使わないという。木が若いと、どうしても粘りが足りないのだという。
この杉の葉を細かく砕くのが水車の仕事である。水車の動力源も、杉の葉と同じく地元・筑波のもの。筑波山の渓流(恋瀬川の源流)を利用しているのだ。
すべての工程を手作りで行う駒村清明堂の杉線香づくり。機械を使えばより短い時間で線香を作ることはできるであろう。しかし、時間を短縮すると、せっかくの杉の香が弱くなってしまう。
筑波山に残る歴史のように、ゆっくりと時間をかけて、杉線香は作り上げられるのである。