「鹿の子 (かのこ) はたくさんくくらんでもええさかい。まともな粒を一粒くくる。
その粒の積み重ね。それが鹿の子やで。」
その名の通り、小鹿の斑点に似た括りを特長とした、京鹿の子 (きょうかのこ) 絞り。
千年以上の間、絞り・染めの色や立体的な質感で人々を魅了する伝統工芸品である。
その制作はまさに、熟練の職人による「技術と時間の積み重ね」だ。
下絵、絞り (括り)、染め分け、染色、湯のし。
5つの工房による分業で、1年以上かけて丁寧に作られる鹿の子は、
各工程の職人がひとりひとりの技術を積み重ねた末の作品なのだ。
「やっていて、よかったなと。私の使命だったのだな。」
伝統を担う職人は、そんな心構えを持ち今日も仕事に向かう。