溝井誠さんが映像に収めるのは、伝統工芸だけではありません。緋色の夕陽に照らされる海原、異界に誘う幽々たる洞窟、絹糸が流れ落ちる涼やかな滝……。こうした美しい日本の風景を撮影・記録するのも、溝井さんの使命です。風景撮影編では、過酷な自然を撮影するときの技術や心構えについてお聞きしました。
撮影に最も欠かせないのが「XDCAMメモリーカムコーダー PXW-FS5K」(以下、FS5)です。FS5は、とにかく小さくて軽くて持ち歩きがラク! 風景撮影では、当然足場の悪いところも多いので、すごく助かっています。
撮影する被写体に応じて、レンズを交換することもできるのですが、風景撮影では基本的に標準レンズを使用しています。風景は…というより、PRO-DITIONAL NIPPONでは、加工はせず、目で見た映像に近いオリジナルのままで撮影することにこだわりたいんです。その点、FS5はいろいろな機能を駆使しなくても、そのままの風景を切り取ることができる。頼もしいですね。
その時の天候など、気象条件も自然風景を撮影する際には重要です。絶景で有名な場所でも、いつも同じ映像が撮れるわけではありません。だからこそ、自分がその場に行った際は、その時その時で最高の風景を切り取れるよう、ベストを尽くします。時間をかけられるときはたっぷり時間をかけ、その映像だけで完結させるような思いで撮影しています。
FS5で特に役立っている機能が、「超解像ズーム」です。4K撮影時に最大1.5倍まで焦点距離を伸ばすことができるので、離れたところの小さな生き物や植物にもぐっと寄ることができます。ズームインしたときに、光量落ちしないのも心強いです。
それと、屋内から屋外など、刻々と照度が変わるときも最適な露出に調整してくれる「電子式可変NDフィルター」も、たまに使用します。
屋外でも屋内でも、絞り値(F値)は特に気にします。絞りすぎるとピント調節がシビアになりすぎてしまい、動きが予測できないものを撮影する時はとても難しいので、屋外でもF値を上げたほうが、広い画でもピントがあいやすくなります。撮影がうまくいくかどうか、F値がカギといってもいいかもしれません。
もう1台の撮影機材が、「デジタル一眼カメラ α7R II」です。これも高機能なのに、小さくて軽いし、さらにFS5とレンズが共有できるのは心強いですね。一人で山を登らなくちゃいけないときも、これなら荷物にならない。それに、真っ暗な夜景、シャッタースピードを落としての滝や川…そんな、通常は三脚がないと難しい撮影も、手持ちのままでいけるんです。これはすごいと思いました。
これまで撮影した中では、熊本県の鍋ケ滝で撮影した写真が一番気に入っています。太陽の光が繊細に表現できているからです。
たった一人、しかも長く続く撮影旅行。撮影に苦労することもありますが、一喜一憂すると体調にも影響するので、苦労を苦労として考えないようにしています。もちろんこれからも、美しい自然の風景を撮影したいですが、ごく何気ない町並みなんかも、もっと撮影して、記録に残していきたいですね。
日本の美しい風景を映像に切り取る溝井さん。溝井さんの旅はまだまだ続きます。次は、どんな風景を私たちに見せてくれるのか、どうか、注目してください!