世界を撮り歩いた映像のプロ(Professional)が、日本に残る伝統(Traditional)を撮影・記録し、その美しい映像を紹介する「PRO-DITIONAL NIPPON」。たった一人で47都道府県を巡り、取材・撮影・編集を担当する溝井誠さんにその舞台裏をお聞きしました。そこには、すべてを一人で行うゆえの苦労や楽しみがありました。
取材先については、ひとつでも多くの分野の職人の方に話を聞きたいと思って、選んでいます。選定の基準は、なるべく他では紹介されていないもの。「PRO-DITIONAL NIPPON」を通じて、あまり知られていない伝統を少しでも多くの方に知ってもらえればと考えています。後継者が不足している伝統が多いからこそ、地域固有の伝統を記録し、後世に伝えるのはもちろん、未来の職人さんにバトンを渡す架け橋になりたいと願っています。
「忙しくて対応できない」と、何度か取材を断られたことも。でも、伝統の魅力を全国の人に伝えたい、記録として後世に残したい、という企画の意図を伝えると、ほとんどの職人さんは快く引き受けてくれます。
旅の相棒は、バンと撮影機材。機材については、1週間毎にメンテナンスをしています。最後まで無事に旅をするのに一番大切なのは、安全運転。普段の運転ではあり得ないくらい、後続車に道を譲ってるんですよ。長距離を運転しなくてはいけないので、疲れたなと思った時は、すぐに路肩に止めて休むようにしています。
たまに夜に移動することがあり、暗い中、対向車も街灯もない山道を一人で走っていると、ふと怖くなることが……。寂しくなることはありませんが、電車やバスの移動とは違い、移動中は車中に僕一人なので、独り言が増えたかもしれませんね(笑)。
撮影がメインの旅なので、残念ながら食は二の次。やっぱり一番の楽しみは、全国の職人さんとの出会いです。大切な仕事風景を撮影させていただけるだけでなく、じっくりお話も伺うことができるなど、職人さんたちの心遣いに感謝しっぱなしの旅です。
もう一つの楽しみが、美しく壮大な風景。これまでで一番感動したのは、熊本・阿蘇の雲海です。世界中のさまざまな風景を自分の目で見てきましたが、雲海をしっかり見たのはあれが初めてでした。
約7か月、西日本はほぼ周りましたが、晴天だった日は、あまりなかったかも。雨の日は雨の日なりの美しさがあるのですが、今後はなるべく晴れてくれるといいですね。
職人さんたちとの出会い、そして美しい日本の風景。溝井さんの旅は、まだまだ続きます。今後の「PRO-DITIONAL NIPPON」も、どうぞ、お楽しみに!