ペリー来航で有名な伊豆半島南端の港町、下田。そこに伝わるのが下田脂松細工である。
ペリー来航以前から、江戸と関西を結ぶ重要な拠点として栄えていた下田は、天城山系から切り出される良質の木材を利用しての建築、建具、指物の生産でも名を馳せていた。そんな伊豆の指物師たちが生み出したのが下田脂松細工だ。誕生の歴史は江戸時代後期に遡る。
全国でも黒松だけを指物として加工しているのが下田脂松細工。黒松は木によって堅さが異なり、木目も複雑な上、松脂がとても多い。ひと言でいうと、非常に手間暇かかる素材に細工を施し、作り上げているのである。
「下田にこういう品があったんだということを知ってほしい」
嶋崎さんは、そう語る。