新潟県にある秋津駅から始まり、日本海に沿うように山形、秋田県の秋田駅へと続く鉄道がある。
旧国名でいう出羽国 (でわのくに) と越国 (こしのくに) を結んだことから「羽越 (うえつ) 本線」と名付けられている。
その名前を持つのが「羽越しな布 (うえつしなふ)」。
「古代布」と呼ばれる、縄文や弥生時代から存在する山野に自生する草木を基につくる布の伝統工芸品の一種である。
特長は糸が太く、水にも強いこと。
冬の手仕事として各家庭で作られ、衣服から収納袋、漁網など幅広く利用された。
そして現代もその特性を生かした、新たな作品が生み出されている。
「伝統は何か、とは特に考えないが、“やるもの”“続けるもの”“なくしてはいけないもの”」だと五十嵐さんは言う。
羽越の手仕事はそうして、今にも続いているのだ。